研究内容RESEARCH

クリニカルバイオリソース事業

クリニカルバイオリソース事業について

腫瘍内科では、2013年9月にがん患者さんの時系列の生体試料(組織の一部、血液や尿など)及びデータベース化された臨床情報を有するキャンサーバイオバンク事業を立ち上げ、高品質なヒト生体試料・関連情報(クリニカルバイオリソース)の収集・保管、そして学内外での活用を行っています。さらに2017年11月にはクリニカルバイオリソースセンターとして改編し、がん以外の疾患や健常者へも対象者を拡大し、アカデミアにおける臨床研究・医療開発の効率化を図り、早期に革新的医療を社会に提供することを目的としています。

「バンキング(貯める)」でなく、「リソース(提供する)」へ

従来から、医学の発展に役立てて欲しいとの患者さんのご厚意から、日常診療で採取する血液や手術で摘出した検体などの一部を研究利用のために提供いただく仕組みがありますが、現在では、有望な研究シーズをいち早く臨床応用につなげるため、より高品質なヒト生体試料(クリニカルバイオリソース)と関連診療情報を使って、非臨床段階からヒトでの病態の理解、創薬シーズの有効性の事前評価が必要不可欠となってきています。
国内、国外には、これらクリニカルバイオリソースを収集し保管する機関(バイオバンク)が数多くありますが、病気の治療や早期発見につながる研究への利活用がなかなか進まないという課題があるのも事実です。
そのために、当センターでは、次に示す3つの強みを生かした事業を展開し、アカデミア・企業等の研究ニーズにマッチしたクリニカルバイオリソースの提供を行っています。
❶ 治療前後の時系列での試料収集とそれに豊富な臨床情報を紐づけるシステム
❷ 世界標準に完全準拠した迅速かつ高品質な採取・処理・保管システム
❸ 京都大学が出資する株式会社KBBMと連携した産in学によるエコシステム

京都大学が出資する株式会社KBBMと連携した産in学によるエコシステム

2020年4月には、臨床開発との連携を強化するため、クリニカルバイオリソース収集ロボットシステム(BRAHMS)を導入しました。血液検体から自動で血漿分離やDNA抽出を高精度に行い、長期的な検体保存の安定性を向上させるために工程毎に品質管理を実施しています。採血管を専用ラックで装置に投入するだけで、開栓後の採血管に人が触れることが無いため、品質管理のみならず安全性も担保しています。クリニカルバイオリソースの確実な保管と入出庫の自動化およびデータベース化により、作業効率をさらに向上させています。

当科の診療領域の検体収集と活用

腫瘍内科では、2013年から食道がんやその他の消化器がんの症例で経時的に血液検体、内視鏡生検検体を収集保管しています。基本的に化学療法は5回、手術は3回、内視鏡治療は2回と治療経過中の採血を行い保管しています。また、保管済みの検体を積極的に学内外の研究に利用しており、これまでに〇〇〇例△△△本の検体を払い出しています。 また、2019年11月からは消化管外科のご協力のもと、最も臨床研究や医療開発に利活用されると期待できる手術標本からの新鮮凍結標本の系統的な収集を行っています。そして、これらのクリニカルバイオリソースに紐づく臨床情報、検体管理・品質情報等を統合データベースとして一元管理し、容易に検索できるシステムの構築を進め、稼働を開始しています。

時系列に構造化したデータ

令和4年度からは、さらに基礎と臨床の橋渡しを効率化するため、3Dオルガノイドの樹立・保管プロジェクトも開始しました。3Dオルガノイドは研究室で継続して培養することが可能なため、薬物の有効性・安全性の確認試験に用いることができ、前臨床試験における動物実験を減らすことができ、研究開発にかかる期間の短縮が見込まれます。3Dオルガノイドを、既存の生体試料と同様に臨床情報と紐づけることにより、より付加価値の高い生体試料として期待されます。

戻る